純情エゴイスト

□心と体
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 心があるならば 相容れない想いなど無い

 心があるから 想いは必ず混じり合う

 そうして人と人とは理解し合うのだ



真夜中、ふと目を覚ました野分は、ソファーで寝たせいで強張る関節を鳴らしながら、自室へと向かう。

野分としては今はまだ弘樹の傍にいたくなかった。

それは嫌いになったという訳ではなく、むしろその逆で、嫉妬で荒れる気持ちを弘樹にぶつけそうで怖いからである。

野分は暗い部屋へと入ると、電気も付けずに布団に潜り込む。

部屋は思っていたよりも暖かく、布団は弘樹の匂いに包まれていた。

野分はすっと眠りに入った。

翌朝、アラームの音で目が覚めた野分は、体を起して部屋を見渡し驚いた。

昨日は気がつかなかったが、部屋には弘樹の本が散乱していた。

そして野分は自分の寝ていた布団に目を落とす。

布団から香る匂いは弘樹のもので、それは染みつく程弘樹が使ったという証で…。

思い返せば、弘樹の部屋は異様に綺麗だったなと野分は思い出す。

(ヒロさん、俺がいない間…)

ドクン…と心臓が高鳴る。

だが、嬉しさと同時に申し訳ない気持ちが入り混じる。

野分はいても立ってもいられなくなり、弘樹の部屋へと向かう。

弘樹は縮こまったまままだ寝ていた。

野分がそっと近づいて、髪に手を滑らせると弘樹の唇から野分…と声がこぼれる。

それにどうしようもない愛おしさが込み上げる。

野分は触れるだけのキスを落とす。

だが、昨日の事がふと蘇り野分の胸をチリチリと焦がしていく。

(この唇に他の誰かが…)

そう考え出したら、嫉妬やら対抗心やら焦りが野分の中に渦巻き、気付けば弘樹の唇を貪っていた。

弘樹の苦しそうな声に我に返ったが、荒く息をする弘樹に野分は居た堪れなくなった。

(俺は今・・・)

弘樹の頭を優しく撫で続けると、また安らかな寝息へと戻る。

野分が制御出来ない自分の気持ちに、初めて弘樹に触れるのが怖いと思った。


 
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