純情エゴイスト
□心と体
12ページ/30ページ
心があるならば 相容れない想いなど無い
心があるから 想いは必ず混じり合う
そうして人と人とは理解し合うのだ
真夜中、ふと目を覚ました野分は、ソファーで寝たせいで強張る関節を鳴らしながら、自室へと向かう。
野分としては今はまだ弘樹の傍にいたくなかった。
それは嫌いになったという訳ではなく、むしろその逆で、嫉妬で荒れる気持ちを弘樹にぶつけそうで怖いからである。
野分は暗い部屋へと入ると、電気も付けずに布団に潜り込む。
部屋は思っていたよりも暖かく、布団は弘樹の匂いに包まれていた。
野分はすっと眠りに入った。
翌朝、アラームの音で目が覚めた野分は、体を起して部屋を見渡し驚いた。
昨日は気がつかなかったが、部屋には弘樹の本が散乱していた。
そして野分は自分の寝ていた布団に目を落とす。
布団から香る匂いは弘樹のもので、それは染みつく程弘樹が使ったという証で…。
思い返せば、弘樹の部屋は異様に綺麗だったなと野分は思い出す。
(ヒロさん、俺がいない間…)
ドクン…と心臓が高鳴る。
だが、嬉しさと同時に申し訳ない気持ちが入り混じる。
野分はいても立ってもいられなくなり、弘樹の部屋へと向かう。
弘樹は縮こまったまままだ寝ていた。
野分がそっと近づいて、髪に手を滑らせると弘樹の唇から野分…と声がこぼれる。
それにどうしようもない愛おしさが込み上げる。
野分は触れるだけのキスを落とす。
だが、昨日の事がふと蘇り野分の胸をチリチリと焦がしていく。
(この唇に他の誰かが…)
そう考え出したら、嫉妬やら対抗心やら焦りが野分の中に渦巻き、気付けば弘樹の唇を貪っていた。
弘樹の苦しそうな声に我に返ったが、荒く息をする弘樹に野分は居た堪れなくなった。
(俺は今・・・)
弘樹の頭を優しく撫で続けると、また安らかな寝息へと戻る。
野分が制御出来ない自分の気持ちに、初めて弘樹に触れるのが怖いと思った。